裏話 第30話 「薬の質問だけは..」~~医療相談に際して

裏面の健康うら話 第30話
「薬の質問だけは..」~~医療相談に際して
(2017年5月作成)
診察室で患者さんから私の専門(脳神経外科)以外の質問をしばしばお受けすることがあります。かかりつけ医として、当院でも検査や処方など可能な範囲内で対応しますが、他の専門医療機関を受診したほうが良い場合は紹介するなどいたします。どうぞ、遠慮せずにお尋ねください。
しかしながら、一部にお答えしづらい質問があります。他の医療機関で診断や治療について質問したけれど説明がよく分からなかった、疑問があったけど尋ねられなかった、などの相談です。
一般的な事柄ならば、ある程度までは答えられます。ですが、個別に具体的なところまではどうしてもお答えできません。こちらが専門外であったり、全ての判断材料(検査結果や経緯など)を持ち合わせていないためです。
中でも多いのは、処方されたお薬に関することです。これもまた、一般的なことまでは答えられますが、具体的なところまではお答えできません(相談の内容は、飲み続けたほうが良いのか?または中止しても良いのか?という質問がほとんどです)。
十分お答えできないわけは、先ほど書いたことに加えて以下のような理由もあります。薬には色々な効果があり、処方した医師がどの効果を目的に(あるいはどの効果を期待して)その薬を処方したのかが分からないと判断できないからです。
たとえば解熱剤です。多くのものは鎮痛作用もあります。解熱目的で処方したのか、それとも痛みに対して使っているのか、それが分からないと判断できないのです。また高血圧の薬には血圧を下げる主作用以外に、腎臓を保護する効果やその他の作用を兼ね備えたものが多くあります。処方した医師がどういう意図でその薬を選んだのか分からないことには判断できないのです。
ですから、そういう場合は、遠慮したりせずにもう一度その医師に尋ねましょう。世の中には遠慮したほうが良い場合と、そうでない場合がありますが、この件に関しては遠慮しない方が良いでしょう。むしろ、根掘り葉掘り訊くぐらいの気持ちでいるほうがよいかも知れません。
尋ねづらいとは思いますが、一度(勇気をだして?)その医師に質問してみてください。ちゃんと答えてくれるはずです。それでもダメでしたら、その時はこちらにお尋ねください。(本音を少しだけ言いますと、自分で処方した薬に関して他の医師に相談されると少し寂しいものです。遠慮がちに書きましたけど、一番おつたえしたかったのはこのとこです。)
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●蛇足:
・おしゃべりなヤツほど,
自分のことは棚に上げて,
他人のことを「おしゃべり」と言う。
~~ある人
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松山 眞千
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裏話 第29話 「健康保険が使えない場合って?」~~主にケガ(外傷)の話

裏面の健康うら話 第29話
「健康保険が使えない場合って?」~~主にケガ(外傷)の話
(2017年1月作成)
医療保険には民間企業の雇用労働者の方を対象とする健康保険(健康保険組合・全国健康保険協会・各共済組合など、いわゆる「社会保険」)と、自営業の方が対象の国民健康保険があります。ここでは両方あわせて健康保険と呼びます。
健康保険で診療ができるのは一部の外傷とほとんどすべての病気です。ここでいう「外傷」とは、「ケガ」とほぼ同じ意味です。出血するような傷があってもなくても、外からの力で身体に何らかの障害ができることを外傷といいます。切り傷、打撲などすべて外傷だと思ってください。じつは火傷(熱傷)も外傷に含まれます。
ほぼすべての病気は健康保険で診療が可能ですので、ここでは主に外傷について説明いたします。多くの外傷は健康保険で診療することができますが、健康保険が適用されない外傷もあります。
間違ってケガをした場合(料理中にやけどした、転んで足を捻挫した等)は当たり前ですが健康保険による治療が可能です。しかし、他者による外傷のほとんどは健康保険では診療できません。健康保険側は「相手(加害者など)に診療費を出してもらってください、それはウチでは出せません」というわけです。
例えば交通事故です。責任の比率によりますが、原則的に事故を起こした当事者が診療費を自費で支払わなければなりません。そのために自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)があります。
仕事中や通勤途中に負った外傷についても健康保険による診療の対象外です。そのために用意されているのが、労災保険(労働者災害補償保険)です。なお、仕事が原因で病気になった場合(労災認定された疾病)については、いずれ別の機会に解説したいと思います。
また、揉め事やトラブルで誰かに傷つけられた場合(第三者行為と呼びます)も健康保険では診療できません。やはり健康保険側は「相手に負担してもらってください、そこまで出せません」というわけです。よって自費で診療して、その費用は加害者に請求していただくことになります。
補足です。処方箋や薬を患者さんが紛失してしまった場合の処方箋再発行については、健康保険による再発行は許されていないので、原則的に自費になってしまいます。お気を付けください。
このように病気の診療のごく一部、あるいは外傷の原因によっては、健康保険による診療は行えず自費で診療しなければなりません。ただし、もちろん例外はあり、上記で説明した内容に当てはまるものでも、事情によっては健康保険による診療が可能な場合もあります。
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●蛇足:
・星をつかもうとして手を伸ばしても、
なかなかつかめないかもしれない。
でも星をつかもうとして
泥をつかまされる事はありません。
~~レオ・バネット
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裏話 第28話 「脳卒中について」~~ひっくるめてこう呼びます

裏面の健康うら話 第28話
「脳卒中について」~~ひっくるめてこう呼びます
(2016年9月作成)
脳卒中とは脳梗塞(のうこうそく)、脳出血、くも膜下出血など、脳の血管が原因で急に具合が悪くなって倒れてしまう病気の総称です。各々の解説の前に、まずは言葉の説明から始めます。
脳卒中の「卒」の文字は、「終わる」「倒れる」という意味があります。「卒倒」「卒業」というように使われます。そして脳卒中の「中」の文字は、「真ん中」という意味以外に「あたる」という意味があります。実際に「中る」と書いて「あたる」と読みます。「命中する」「的中する」はこの「あたる」という意味です。「中毒」も「毒にあたる」という意味ですし、「熱中症」も「熱にあたる病気」という意味です。つまり、「脳卒中」とは、「脳が何かにあたった状態になって倒れる」という意味になるわけです。
まず、脳梗塞です。脳へ血液を送っている血管がなんらかの原因で詰まってしまい、その先の血流が止まってしまう場合があります。すると脳へ酸素と栄養が届かず、脳細胞が壊れてしまいます。脳梗塞が起きて障害を受けた脳の部位や大きさによって症状は様々です。急に言葉が出なくなったり、片方の手足が動かなくなったり、意識を失ったりすること等がよく起こる症状です。
次に、脳出血です。これは、脳の中の血管が破れて出血し、脳内に血腫(けっしゅ:血液のかたまり)が生じ、周囲の脳が圧迫されたり破壊されてしまうことにより、症状が起きてしまう病気です。症状は脳梗塞と似ていて、脳出血の起こった場所や大きさで異なります。また、脳出血の場合は脳梗塞の症状に加えて、頭痛を起こす場合が多いです。
脳卒中の3つ目は、くも膜下出血です。これは脳の表面の血管の病変(詳細は省略しますが、脳動脈瘤や脳動脈奇形などです)から大量の出血が脳の表面に起きるもので、突然の激しい頭痛や意識消失を起こします。脳卒中の中で最も死亡率の高い危険な病気です。
今回は、脳卒中について簡単にご紹介しました。最後にもう一つ。脳梗塞の原因には、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙など色々ありますが、その中でも最も強い関係があるのは高血圧です。言い換えると、高血圧の治療が、脳梗塞予防の第一歩だということを書き添えます。
(蛇足:よく「脳の血管が切れて…」という表現を聞きますが、血管が破れて(切れて)起きた脳出血を意味しているのか、血管が詰まって(血流が途絶えて=切れて)生じる脳梗塞を言おうとしているか判別がつきません。ですので、ここでは「切れて」という言い方は控えました。)
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●蛇足:
・解決策が分らないのではない。
問題が分っていないのだ 。
~~チェスタートン
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裏話 第27話 「続・笑いと健康」その1~~脳卒中予防効果も?

裏面の健康うら話 第27話
「続・笑いと健康」その1~~脳卒中予防効果も?
(2016年5月作成)
前々回の裏話第25話「笑いと健康」(その7)で、笑いが健康に及ぼす影響についての話は一旦終了としましたが、新しい情報を入手しましたので、続編としてお届けいたします。
普段、笑うことがほとんどない人は、ほぼ毎日笑う人に比べて脳卒中のリスクが1.6倍増えるとの調査結果を、日本疫学会の専門誌に千葉大や東京大などの研究チームが先日発表しました。
~~~ 以下は研究発表の要約です。~~~~
笑いが健康に良いことは、これまでの様々な研究によって示されています。その中に、笑いと動脈硬化やストレスに関する研究結果があります。動脈硬化やストレスは、心疾患または脳卒中の有名な危険因子ですが、笑いと心疾患または脳卒中の関連を調べた研究は今までにありませんでした。そこで本研究では、その関連を評価することを目的としました。
対象としたのは、2013年度日本老年病学会のアンケート調査に回答した65歳以上の高齢者で、総数26,368人のうち、笑いやうつなどの質問項目に回答漏れのない20,934人 のデータです。笑いの頻度・場面と自己評価した健康度との関係を分析し、さらにその結果を、肥満度、高脂血症、高血圧などの影響も踏まえ、統計的に処理しました。
その結果、笑う頻度が最も少ないグループは、ほぼ毎日笑うグループに比べ、脳卒中を起こす割合が約1.6倍高いことが分かりました。同様のことは心疾患においても見られ、その比率は約1.21倍でした。
この研究結果は、高齢者において笑いが心疾患または脳卒中の発症を抑えるのに有用である可能性を示しています。要因としては、笑いがストレスを軽減するなどのメカニズムが考えられますが(今までの研究から心疾患または脳卒中とストレスとの密接な関連が分かっています)、こうしたメカニズムについてはさらなる研究が必要です。
なお、本研究は「よく笑う人ほど脳卒中や心疾患を持たない」可能性を示しますが、このことが「よく笑うと脳卒中にならない」というような「笑いによる予防効果」を意味するものではない点にもご留意ください。
(Kei Hayashi, Naoki Kondo, et al. Laughter is the Best Medicine? A Cross-Sectional Study of Cardiovascular Disease Among Older Japanese Adults. J Epidemiol 2016. doi:10.2188/jea.JE20150196)
~~~~ 以上です。~~~~
さらなる研究が待たれますが、やはり笑いには病気にかかりにくくする力がありそうですね。
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●蛇足:

・身体の老いは怖れないが、
心の老いが怖ろしい。
~~中国の諺
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裏話 第26話 「患者さんが出た後」~~診察室の中では……

裏面の健康うら話 第26話 

「患者さんが出た後」~~診察室の中では……

201601月作成)
病院や診療所の待合室で待っていると、前の患者さんが診察室から出て来た後、すぐに次の患者さんが呼ばれないことがあります。

待つ身になると、その間が長く感じられると、ある方から聞きました。しかも、そういう事が多いと言うのです。「前の人が出たのに、何ですぐに次を呼ばないんだろう?」って思うそうなのです。自分の順番が近い時はなおさらだそうです。

……そのように思われているのだろうとは、うすうす感じておりました。ですが、ズバリ指摘されたのは初めてです。申し訳ございません。今回はこの件についてご説明(釈明?)いたします。

患者さんが診察室から出て行かれた後に中で何をしているのかというと、(医師によって多少違うでしょうが)今診察が終わった患者さんのカルテ記載の追加や諸伝票の記入をしたり、次の患者さんの準備をしています。

診察中に重要な事や要点を書き留めることは出来ますが、一部は診察が終わってから後で書こうと思いながら診察を進めています。(全てその場で書いていたら診察が間延びしてしまいます。)

また、今後の方針や次回の予定をメモします。(例えば「次回は採血予定」、「次回改善していたら処方は終了」、「改善なければ精密検査を検討する」等です。)

当院では電子カルテを使っていますので、タイプミスや誤変換もあります。これらは患者さんが途切れてお待ちの方がいない時や診療終了後(昼休みか夜の残業時間)に訂正しています。

先ほど書いた次の患者さんの準備とは、いわゆる予習です。前回のカルテ記載や、前回の診察後に届いた検査結果の確認です。前回受診時に他の医療機関を紹介した場合、紹介先からお返事(受診結果報告書)が届いていたらそれにも目を通します。

それをせずにお呼びしてしまうと、「えーっと、今日は、たしか……、採血しましょうとか、先月お話ししましたっけ?」等と、たどたどしく、なんとも間抜けな状態になってしまいます。

以上、患者さんが診察室から出てから次の方をお呼びするまでの間に診察室で何が行われているのかの一部をご紹介致しました。これらを、なるべく手早く行うよう努力しております。

(なお、お手洗いへ行ったり、かかってきた電話に出ていたりすることもありますけど……)

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●蛇足:
・老年の歳月における人生は、
悲劇の第五幕に似ている。
人間は悲劇的な最後が近いことは知っているが、
それがいかなるものであるかは知らない。
~~ショウペンハウエル
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裏話 第25話 「笑いと健康」その7~~脳血流や脳波に与える影響

裏面の健康うら話 第25話
「笑いと健康」その7~~脳血流や脳波に与える影響
(2015年9月作成)
日本笑い学会には、医師も多く入会しています。私もその一人です。これまであまり詳しくご紹介してきませんでしたが、日本笑い学会では笑いに関するあらゆるものを研究対象としています。医師以外には放送作家や芸人さんはもちろん、文学部の先生が古典の中の笑いについて研究していたり、笑いの測定装置を開発している工学部の先生もいます。また、社会学部の先生がコミュニケーションの中の笑いを研究していたり、動物の笑いについて調べている研究者もいます。
中には、医師であり同時に落語家という方もいました。脳神経外科医の故中島英雄先生です。中央群馬脳神経外科病院の前理事長で、脳神経外科専門医であると同時に、十代目桂文治一門の桂前治という真打でした。残念なことに平成24年6月にお亡くなりになりました。
生前、中島先生は脳神経外科の診療をしながら、病院寄席を開いて、患者さん、ご家族、スタッフを対象に自ら高座に上がられていました。その際に、患者さんのご協力を得て(当然診療上必要な患者さんだったと思われますが…)、落語を聞く前後での脳血流や脳波の違いを調べる研究もされていました。
血流の測定は脳血流シンチグラム(SPECT)という検査で行います。検査の原理は放射性同位物質を注射して、それを特殊な装置で検出し、血流を測定するというものです。落語を聞いた後では、聞く前と比較して、脳血流が8.2%上昇したというデータを中島先生は発表していました。(詳細は省きますが、画質の関係で、同院の計測装置では、有意な上昇は5%以上だとのことですから、この8.2%というのは、明らかな上昇傾向を示していると言えそうです。)
また、脳波においては、脳のリラックス状態で出るα波と、脳の活性状態で出るβ波の両波形が、落語を聞いて笑った後では増える傾向にあったと報告しています。
脳波や脳血流のこれらのデータを見ると、笑いは脳の働きによい影響を与えてくれているのかもしれません。
シリーズ「笑いと健康」は、今回が最終回です。新しい事柄が分かりましたら、今後も追加でご紹介したいと思います。ありがとうございました。
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●蛇足:
・生きることは病気である。
眠りがその苦しみを軽減してくれる。
眠りは一時的な緩和剤であり、死は特効薬である。
~~S・シャンフォール
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裏話 第24話 「努力なしで治る病気」~~そんなものありません。

裏面の健康うら話 第24話
「努力なしで治る病気」~~そんなものありません。
(2015年05月作成)
努力せずに治る病気なんてあるでしょうか?全く無いとは言い切れませんが、実際のところ、そのような病気はほとんどありません。薬だけで治る病気があったとしても「薬を忘れずのむ」という努力が必要ですから。それはさておき、いくつか例を挙げて説明をいたします。
まずは高血圧です。第一歩は塩分制限と体重管理ですよね。医療機関で「塩分を控えましょう」と説明を受けたことがあるかと思います。お薬を欠かさず内服するのも大切です。
つぎに風邪の場合です。風邪薬を処方されて内服するのも大切ですが、それ以前に暖かくしてよく休むということが大切です。睡眠(休養)をとることによって免疫力は高まります(忙しくてなかなか休めないという方も多いと思いますが…)。また体を冷やすと免疫力は下がってしまうのです。夜更かしや深酒をして遊んだりすると、風邪薬をのんでも、治るものも治りません。こじらせてしまうこともあります。予防としてのうがいや手洗い、これも大切です。
さらに、頭痛やめまいについてです。温熱療法や運動療法(肩や首のストレッチ体操)が有効なタイプの頭痛やめまいでは、お薬よりもストレッチ体操などによって、まずは筋肉をリラックスさせることが大切です。初期に数日間だけ薬を用いる場合もありますが、正しい姿勢や生活習慣を守ることによって、その後はお薬不要になることもあります。
つまり、病気を治すために大切なのは、正しく理解して、実行(努力)する、ということです。
どうして治療をしているのかを正しく理解しているかどうかで差が出てきます。高血圧に話を戻しますが、治療の目的は単に血圧の数値を下げることではありません。高血圧によってひき起こされる脳出血、脳梗塞、心筋梗塞などの病気の予防が、高血圧治療の目的です。すると、長期間の平均的な血圧の維持が大切だということがわかります。
また、高血圧の治療目的について十分な説明をせずに、「血圧が高いから薬を出しましょう」と言って一方的にこちらから処方しても、途中で通院をやめてしまう方が多いのです。当院では患者さんが治療について良く理解して希望するまで処方しないことがあります。(これをお読みになっている方にもそのようなご経験はありませんか?)
まとめますと、正しい理解と納得、そして実行することが大切だということです。もちろん、当院でも治療に際しては、患者さんの経済的、時間的、心理的負担をなるべく少なくするよう配慮しています。それと同時に患者さん側のほんの少しの努力がより効果的だと思っています。
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・健康な人は自分の健康に気がつかない。
病人だけが健康を知っている。
~~カールライス
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裏話 第23話 「笑いと健康」その6~~脳内物質や自律神経などとの関係

裏面の健康うら話 第23話
「笑いと健康」その6~~脳内物質や自律神経などとの関係
(2015年1月作成)
シリーズ第6話の今回は笑いと脳内物質、自律神経などとの関係について述べたいと思います。
(1)笑いと脳内物質
最初は、笑いと脳内物質についてです。まず、脳内麻薬の一つであるβ(ベータ)-エンドルフィンとの関係です。マラソンなどで長時間走り続けると気分が高揚してくる作用「ランナーズハイ」は、β-エンドルフィンの分泌によるものとの説があります。
また、β-エンドルフィンには鎮痛作用があります。子供のころ、運動会で走って転んでも、その時はあまり痛くなかったというのもβ-エンドルフィンのおかげだったのです。笑うことによって、β-エンドルフィンは増加することが知られています。
次に、快楽物質として知られるセロトニンについてです。うつ病ではセロトニンが低下します。最近ではセロトニンの減少を抑える働きのあるうつ病の治療薬も多く使われるようになってきました。笑うことで、セロトニンが増加するという研究データが複数報告されています。
(2)笑いと自律神経
自律神経には交感神経と副交感神経とがあり、両者のバランスが大切です。
興奮した状態やストレスのある時には、交感神経が優位になると言われています。この状態では、血圧が上昇し、筋肉に血流が行き渡り、素早い動きができるようになっています。たとえば、動物が獲物を狙っている状態がまさにそれです。
一方、リラックス状態では、副交感神経が優位になるといわれています。具体的には、食事をしたり、風呂に入ったりすることが有効です。笑うことによって、この副交感神経が優位になり、リラックス状態になれることが知られています。
(3)笑いと血小板凝集能
今回の最後は、血小板凝集能についてです。私たちがケガをして出血しても血は数分で止まり、その後カサブタができますが、それは血小板の働きによるものです。血小板は血液中の細胞成分の一つですが、血小板凝集能とは、血小板が働いて血液を固める能力のことをいいます。
脳梗塞予防や心筋梗塞予防のためには、血小板凝集能を下げる薬を用います。いわゆる血液サラサラの薬です。笑いでも血小板凝集能が低下するといわれています。笑うことによって、脳梗塞や心筋梗塞を減らすことができるかも知れません。逆に腹を立てやすい人では心筋梗塞になる確率が高いという外国の研究報告もあります。笑いながら穏やかに過ごしたいものですね。
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・誉め言葉は半分に聞け
苦言は倍にして聞け
~~ある人
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裏話 第22話 「続・薬の自己調節」(前回は「第11話」)~~一緒に飲んでいいの?

裏面の健康うら話 第22話
「続・薬の自己調節」(前回は「第11話」)~~一緒に飲んでいいの?
(2014年8月作成)
たまに「風邪薬を他でもらったので、それを飲んでいる間、こちらの薬は休みました(飲みませんでした)」等と言われる方がいます。これは、正しいことではありません。
「どうして飲むのを休んだのですか?」と尋ねると、「一緒に飲んではいけないかと思って…」とか、「あまり薬が多いのはいけないと思って…」とお答えになります。その自己判断でやめていた当院からの薬が、血圧の薬であったり、脳梗塞予防薬であったりします。それは、とても危険なことで、こちらはヒヤッといたします。
第11話でも書いた通り、自己判断で薬をやめたりしてはいけません。もし、一緒に飲んではいけないのでは?と思ったら、自己判断する前に薬局か医師に相談しましょう。もしくは、別の医療機関からお薬をもらっていて、新しい薬をもらう際には、他の「お薬のリスト」や「お薬手帳」を診察室や薬局で見せましょう。そうすれば、一緒に飲んで良いかどうか教えてもらえます。
また、よくよくお尋ねしてみると、薬を自己調節している方では、薬をたくさん飲みたくないという気持ちが、心の奥底で働いているようです。それは、もっともなことで、そのお気持ちはよく分かります。
しかしながら、今飲んでいる薬は、とても必要なものです。どうしても薬を減らしたい場合には、主治医に相談しましょう(当院の場合は院長に相談してください)。当院でも、基本的には(当たり前のことですが)必要な薬のみ処方するという方針です。
しかし、どうしても薬を減らしたいというご要望があれば、比較的重要度の低いものを選んで、薬を減らす場合もあります。(さきほども書いた通り、当院では必要最小限しか処方していないので、減らせないことの方が多いのですが…)
繰り返しになりますが、「自己判断しない」「1人でクヨクヨ悩まない」ということが、薬を飲む上で、とても大切なことです。気軽に尋ねるようにしましょう。
最後に話は変わりますが、薬を続けることが必要な病気もあれば、そうでない病気もあります。頭痛やめまいで受診されている方の一部には、「薬や通院なしで、症状の無い生活がゴールです。」と常々ご説明しています。これが頭痛やめまいに対する当院の基本方針です。
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●蛇足:
・どんな社員教育より,
適切なテーマを決めることが良い商品を生み,
社員を教え,はぐくんでくれる。
~~林原 健
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裏話 第21話 「笑いと健康」その5~~笑いと睡眠

裏面の健康うら話 第21話
「笑いと健康」その5~~笑いと睡眠
(2014年4月作成)
「アトピー性皮膚炎患者の不眠を笑いで治そう」という演題で、2007年7月に開催された日本笑い学会総会において、守口敬任会病院アレルギー科部長 木俣肇先生が発表した内容を、ご紹介いたします。「笑いと健康」第5話の今回は、笑いと睡眠との関係についてです。
アトピー性皮膚炎の患者さんは夜間不眠を訴えることが多く、その原因としては、夜間に痒みが増す、夜間に緊張と不安が強まる、などが主なものだそうです。そこで、アトピー性皮膚炎の患者さんと健常者に、以下の2種類のDVDを観てもらい、深夜2時に唾液中のメラトニンを測定しました。(メラトニンとは、睡眠を誘導するホルモンのことで、夜間に多く分泌されます。)
2種類のDVDは…
1)ザ・ベスト・ヒッツ・オブ・ミスタービーン(笑える面白い内容)
2)天気予報(普通の真面目な内容)
…です。前者は、ご存じの方もいるかも知れませんが、ローワン・アトキンソン(英国のコメディアン)が演じる「ミスタービーン」による、かなり楽しいDVDです。
その結果、次のことが分かったそうです。
・アトピー患者のメラトニンは健常者よりも低かった。
・しかし、面白いDVDを観て笑ったほうが、メラトニンが明らかに増加し、不眠も改善した。
なので、日頃からたくさん笑っていると、睡眠不足も解消するかもしれません。
ここで、「笑い」から話は離れますが、睡眠不足により引き起こされる病気は結構多いのです。まず、睡眠不足の時には血圧が上昇します。実際に不眠は高血圧、糖尿病、肥満の原因の一つです。また、睡眠不足が続くと不整脈(心房細動など)の原因にもなります。不眠とうつ病も相互に密接な関係があります。
忙しくてもシッカリ睡眠時間は確保したいですね。また、布団に入っても寝付けない、途中で目が覚めてしまう(眠りが浅い)、というのは睡眠障害の可能性があります。そういう場合は、お薬を上手に用いた方が良いかもしれません。時に専門医の受診が必要になる場合もあります。なお、当裏話のバックナンバー第3話「睡眠について」もご参照ください。
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●蛇足:
・まず何から教えるかなど問題ではない。
ズボンのどっちから脚を入れたっていいではないか。
~~ジェイムズ・ボズウェル
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松山 眞千
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