裏話 第7話「薬ができるまで」~~バイアグラ開発秘話

裏面の健康うら話 第7話 
「薬ができるまで」~~バイアグラ開発秘話(2010年10月作成)
 副題の「バイアグラ」に目が留った御仁もおられるかも知れませんが、まずは薬の開発から…。
 (1)研究開発
 製薬会社では基礎研究を重ね、化学合成をしたり抽出したりして新しい薬を開発します。まずは試験管内で有用性を確認し、さらに動物実験で効果や副作用などが確認されると、新薬の候補になります。次はいよいよ実験室を離れて、医療機関における臨床試験へと進みます。
 (2)臨床試験
 最初は健康な人で安全性を確認します。次に患者さんにおいて有効性と安全性を確認します。通常は8年程度の期間をかけ、延べ1万人という多くの患者さんで効果や副作用を確認した後、ようやく厚生労働省によって新薬として製造ならびに販売の承認がなされます。
 ここで、「プラセボ」という言葉を聞いたことがある人もいるかと思います。「プラセボ効果」とは「偽薬効果」という意味で,薬を内服したことにより,それだけ心理的に効果があると思わせる現象(効果)です。なので,不定愁訴の方には砂糖などを「お薬ですよ」と伝えて内服してもらうと、それだけで症状が消えることがあります。(この場合、砂糖が偽薬に相当します。)
 一定の確率でその様な効果があることは知られていますので,その薬に本当の治療効果があるかどうかは,他の薬(既存の治療薬またはプラセボ)と比較して統計的に有意差があるかどうかで判定します。それに合格してはじめて、厚生労働省から製造および販売の許可がおりるのです。
(3)バイアグラ開発秘話 (なお、専門外ですので、当院でバイアグラは扱っておりません。)
 むかし,英国ファイザー研究所でクエン酸シルデナフィルという薬品が合成されました。当初,抗狭心症薬として開発が進められましたが,残念なことに臨床試験でその有用性が認められませんでした。(多くの患者さんのデータを集計した結果,統計的には狭心症に対する治療効果があるとは言えませんでした。)従って,その狭心症治療薬は発売には至りませんでした。
 臨床試験の終了後、残った薬を回収しようとしたところ,思わぬ副作用に喜んだためか,返却したがらない人が何人もいたそうです。しかも男性ばかり。その副作用とは,陰茎勃起の発現でした。多くの被検者(試験に協力した患者さん)からその副作用報告があったのです。
 というわけで,ファイザー製薬は,その薬の商品名を「バイアグラ」として,販売を開始しました。名前の由来はvital(生きいきした)とNiagara(ナイアガラ)の合成だそうです。狭心症治療薬開発失敗であきらめず、勃起不全治療薬として路線変更したのが成功の秘訣でした。
▼▽▼ 過去の「裏面のうら話」をご希望の方はスタッフまでお声をおかけ下さい。 ▼▽▼
※院内で配布した原稿をそのまま掲載しております。バックナンバーのネット上公開版です。 
★★★ こぶし脳神経クリニック ★★★
http://www.kobushi-clinic.com/