裏面の健康うら話 第13話
「続・血圧の上下について」(前回は「第2話」)~~体温調節とは少し違います
(2011年10月作成)
「体温調節とは少し違います」と副題にありますが、まずそのことから解説いたします。私たちの身体には恒常性というのがあります。恒常性(ホメオスタシス)とは生物のもつ重要な性質のひとつで生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質やその状態を指します。
体温は厳格に調節されています。感染症(風邪など)で、細菌をやっつけるためにわざと身体が体温を上げる場合もありますが、通常は一定に保たれるように様々な機構が働いています。
血圧を一定に保つような調節機構もありますが、種々の事情で血圧は上下することがあります。たとえば、ストレスがかかったり興奮したときには上昇します。動物が獲物を捕るとき等には、アドレナリンが出て血圧が上昇し、早く走るために筋肉へ血液(つまり酸素)を多く届けます。
つまり必要があってわざと急に血圧を上昇させることがあるのです。そういう状態を不快な信号として感じていては、ある意味、邪魔でしかたがありません。したがって私たちの身体には血圧の上下を感じるセンサーはありません。(もちろん、先ほど述べたとおり、血圧を一定に保つための調節機構はありますが、血圧の上下はほとんど感じません。)
一方、とても重要な感覚があります。それは「痛み」です。痛みなどの感覚は身体にとって危険信号です。怪我してしまって痛みを感じたり、熱いものにさわって火傷を負いそうなときには、瞬時に手や足を引っ込めなければなりません。痛みの信号は身体を守るために極めて重要で必要な感覚なのです。ですから痛覚を伝える神経では、速く信号が伝わるようになっています。(※)。
血圧の話しに戻ります。異常な高血圧では頭痛やめまいが起きることがあります。しかし、もっと多いのがその逆のパターンです。つまり、頭痛やめまいがあるために、それが原因で血圧が上昇していて、治療によって頭痛やめまいが治ると、自然に血圧は下がる場合がほとんどです。
繰り返しますが、私たちの身体は血圧の上昇をほとんど感じません。だから怖いのです。血圧を測定して治療が必要な高血圧ならば、対処しておくべきだと思います。高血圧の持続は、心筋梗塞や脳卒中(脳出血、脳梗塞)の原因となりうるからです。
ご興味のある方は、「血圧の上下について~~気温や株価と同じ(第2話)」もご一読下さい。
(※)糖尿病などが進行して、末梢神経障害が起きると、痛みや熱さの感覚が鈍くなります。そういう患者さんでは火傷の心配などが出てきます。詳細はいずれ「糖尿病」の説明で書きます。
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松山 眞千
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