裏話 第20話 「紹介状のいる、いらない」~~診療情報提供書の要否について

裏面の健康うら話 第20話
「紹介状のいる、いらない」~~診療情報提供書の要否について
(2013年12月作成)
医療機関(病院や診療所)を初めて受診する場合(初診と呼びます)、紹介状(診療情報提供書)が必要な場合と不要な場合があります。今回は紹介状についてのお話です。(シリーズ「笑いと健康」はお休みです)

(1)病院の初診~~ほぼ全て必要です。
例外もありますが、ほぼ全て必要と考えて良いでしょう。総合病院では紹介状が無いと、初診時に数千円の別料金が必要なことが多いようです。
(2)診療所の初診~~いる場合といらない場合とがあります。
(2-1)不要な場合:
どこか具合が悪くなって初めて受診する場合は不要です。頭痛やめまい等で初めて当院を来院される場合、もちろん紹介状は要りません。風邪で内科医院を受診する場合も当然不要です。
(2-2)時に必要な場合:
他の専門医への受診をお勧めする場合です。例を挙げて説明します。例えば、当院で処方を受けている患者さんに発疹が出たとします。薬疹である可能性が高い場合は当院での処方内容を添えた紹介状が必要ですので、皮膚科宛の紹介状を作成して患者さんにお渡しします。(「薬疹」とは、薬が原因で起きる発疹のことで、薬の副作用のひとつです。)
でも、そうではなく、明らかに薬疹とは違って、皮膚の病気が疑われる場合は、「近所の皮膚科で診てもらって下さい」と紹介状は書かずに、皮膚科の受診をお勧めする場合もあります。
(2-3)必要な場合:
ある治療中の病気について通院先を変える場合です。あるクリニックに定期的に通って処方を受けていたとします。何かの事情で(引っ越し等で)、通院先を変えるとき、お薬手帳だけを持って初めてのクリニックを受診し、お薬手帳を見せて「今後はこちらに通いたいので、これと同じ薬を出して下さい」と言われたら、医師は困ってしまいます。
それだけでは、検査データも合併症の有無も経過もサッパリ分からないからです。自信を持って迷いなく継続診療ができないのです。診断のための所見や検査結果、治療経過などの情報があったほうが医師は有難いわけです。こういう場合、「必ず紹介状を発行してもらってから、それを持って来院して下さい」と、当院ではお願いしています。
以上、どのような場合に、紹介状が必要なのかについて簡単にご説明いたしました。
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●蛇足:
・多忙なミツバチには悲しむ暇がない。
~~ ウィリアム・ブレイク(1757-1827)

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ドラえもんのコマーシャル(トヨタ)とトリルダン

ちょっと前の話です。
(すみません、古い話で…。実は書きかけの「下書き」を寝かせていまして、今日書き加えてアップします。)
あらためて、ちょっと前にトヨタの実写版ドラえもんCMで、「免許を取ろう!」というキャッチフレーズがありました。
「すごい、さすがトヨタ!」と感心したと同時に、昔あった「トリルダン」というアレルギー薬のことを思い出しました。
さて、「トヨタ」と「トリルダン」のどちらから書きましょうか…。
まず、「トリルダン」から説明します。一般名は「テルフェナジン」という抗ヒスタミン薬で、つまり花粉症に使われる薬でした。日本では「トリルダン」の商品名で1990年に発売されました。
その時のテレビCMが「花粉症になったらお医者さんに相談しましょう」というものだったのです。
某製薬会社も思い切ったCMを作ったものだと感心しました。
(まっ、隠すこともないので、書きますと「塩野義製薬」だったかと記憶しております。)
その頃よりテレビCMでも、ガンガン商品名を連呼するのではなく、イメージコマーシャル的なものが増えつつあったのですが、それでも「花粉症になったらお医者さんに相談しましょう」とだけ、いうのには少々驚いたのです。
当時、トリルダンのシェアは70%ぐらいだったと記憶しております。
つまり、花粉症で医療機関を受診すると、確実に3人に2人はトリルダンを処方される計算になるわけで、高額のテレビCMを出しても、製薬会社では十分回収できるわけです。
ちなみに、そのトリルダンは様々な副作用があったのと、後継となる同系統の新薬が発売されたために、約10年して発売中止になりました。
で、トヨタの「免許を取ろう!」と訴えるCMですが、最近の若い人の車離れ免許離れに対してだと思います。もし免許を取った人が車を買う場合、(すみません、日本の国内での新車販売に占めるトヨタのパーセントを詳しく知りません。…調べればわかるでしょうけども…)その内の何%かはトヨタの車を買うことになるわけで、たぶんその増分でも十分ペイするんだろうな、トップシェアのメーカーだからできるワザだな、と思ったのです。
それで、昔驚いたトリルダンのコマーシャルを思い出した次第です。私としては重なったワケです。
また今回も長々お付き合いくださりありがとうございました。
●蛇足:
・希望を持って旅をつづけるほうが目的地に到達するよりいい。
真の成功はその労苦にある。
~~ R.L.スティーヴンソン(1850-1894)
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裏話 第19話 「笑いと健康」その4~~笑いと運動/代謝

裏面の健康うら話 第19話 
「笑いと健康」その4~~笑いと運動/代謝
(2013年8月作成)
「笑いと健康」第4話の今回は、笑いと運動/代謝との関係についてです。
米国カルフォルニア州にあるスタンフォード大学の精神科医師 ウィリアム・フライ博士によると、20秒間の笑い(大笑い=ゲラゲラ笑い)は…
心拍数増加,血圧上昇,呼吸数増加
…の状態を3~5分持続させるそうです。たとえ、笑い講のように作為的に「わっはっは」と笑う動作をしても、同様の効果があるそうです。
つまり、笑うことには、運動と同じ効果があると考えられています。(なお、いずれ話題にしますが同時に副交感神経の働きも活発になるので、血圧上昇についてはそれほど心配する必要はありません。高血圧の方もどんどん笑いましょう。)
次に、笑いと糖尿病との関係です。国際科学振興財団「心と遺伝子研究会」は、吉本興業とタイアップし2003年2月に、2型糖尿病患者21人に対して次の実験を行いました。
1日目は糖尿病のメカニズムに関する真面目な(楽しくない=つまらない)講演を行いました。
2日目は漫才コンビB&Bのステージで大いに笑ってもらいました。
それぞれ、食前と食後2時間の血糖値を比較したところ、1日目(つまらない講演の後)の血糖上昇幅は、123 mg/dlであったのに対して、2日目(大いに笑った後)は、77 mg/dlでした。両者の差は46 mg/dlでした。大いに笑った後の方が、あまり笑わない場合よりも、血糖上昇幅が小さかったのです。
また、笑うことにより中性脂肪は低下する傾向があるようです。逆に、ストレスがかかると上昇します。(ストレス太りという言葉もありますが、それとの因果関係は定かではありません。)
まとめると、笑いには、ダイエット効果や生活習慣病の予防効果があると期待されています。
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●蛇足:
・運はしばしば扉をたたくが、
 愚者はなかなかそれを中に入れようとしない。
~~ デンマークのことわざ
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医療相談は一切お受けしておりません。
健康面やご病気でのご相談は診察室でお受けしますので、どうぞ受診なさってください。
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裏話 第18話 「薬の分類」~~使用目的でこんなふうに分けてみました。

裏面の健康うら話 第18話 
「薬の分類」~~使用目的でこんなふうに分けてみました。
(2013年4月作成)
今まで薬について何回か書いてきました。今回は分類をしてみたいと思います。
 (1)治療薬と予防薬
この分け方では、思いつく薬の多くは治療のための薬です。そこで、ここでは主に予防薬について例をあげてみます。まずは、ワクチンです。言うまでもなく、色々な伝染病の予防のために接種します。例えば、インフルエンザ、麻疹、風疹、肺炎球菌などの予防接種です。
次は別の例です。怪我をして傷の手当てを受けた時、予防的に抗生物質を処方された経験のある方もいると思います。傷口から細菌が入って化膿(感染)するのを防ぐ目的で内服します。つまり感染予防薬です。(肺炎や膀胱炎にかかった時に使う抗生物質は治療目的なので、感染予防薬ではなく”治療薬”です。)
当院は脳神経外科が専門ですので、脳卒中の患者さんも通院されています。一部の方には、「血液をサラサラにするお薬」を処方しています。いわゆる抗血小板薬です。また、脳の血の流れを良くするお薬(脳循環改善薬)を処方する場合もあります。これらは脳梗塞の予防薬です。
(2)根治療法薬と対症療法薬
治療は大まかに根治療法と対症療法とに分類されます。各々に使われる薬についてこの項目で述べます。根治療法とは、病気を根本から治すことです。例えば、肺炎で抗生物質を使い、原因となっている病原菌を退治する、などです。一方、対症療法とは、症状を和らげる治療のことです。先程の肺炎を例にとると、解熱剤や咳止めの薬などは対症療法のための薬です。
インフルエンザや多くの風邪はウイルス感染症です。抗生物質は、細菌感染症には効きますがインフルンザには無効です。以前は解熱剤などの対症療法しかありませんでしたが、近年抗ウイルス薬が開発されてインフルエンザに対する根治療法も施されるようになりました。
(3)実は生活習慣病の治療薬は… (生活習慣病については「第4話」を参照して下さい。)
生活習慣病は以前「成人病」とも言われていました。最近はメタボリック症候群などとも呼ばれていますが、高血圧・糖尿病・脂質異常症のことです。これらの病気の治療薬は各々検査の数値を良くします。具体的には血圧を下げたり、中性脂肪の値を下げたりします。
しかしながら、生活習慣病の治療の目的(ゴール)は、単に血圧を下げたり、検査データを良くすることではありません。高血圧・脂質異常症・糖尿病といった生活習慣病によって引き起こされる、脳卒中(脳梗塞・脳出血など)や心筋梗塞を予防することが本当の目的です。つまり…、高血圧や高脂血症のお薬は、「治療薬」ではなく「予防薬」なのです。
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●蛇足:
・愛はお互いを見つめあうことではなく、
 ともに同じ方向を見つめることである。
~~ サンテグジュペリ(1900-1943)
 フランスの小説家。童話「星の王子様」の作者として有名。1943年の戦時中に偵察
機に乗って飛び立ったまま行方不明になり、帰らぬ人となる。
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裏話 第17話 「笑いと健康」その3~~笑いと免疫

裏面の健康うら話 第17話 
「笑いと健康」その3~~笑いと免疫
(2012年12月作成)
 3回目の今回は笑いと免疫の関係についてです。その前に、免疫って何でしょうか?「免疫」とは、文字通り「疫病(病気)を免れる」ことですが、少し説明を補足致します。
免疫とは…
(a)「自己(自分自身の本来の細胞など)」と「非自己(抗原=異物・自分の体の外から入ってきた細菌やウイルスなど)」を区別し、「非自己」を攻撃・殺傷・排除すること、
(b)ときには生命そのものを脅かす変質した「自己(ガン細胞など)」を攻撃・殺傷・排除して「疫病(病気)を免れる」働きのこと、です。
これらのような働きを免疫力といいます。以下は笑いと免疫の関係について、いくつか実例を挙げてまいります。
(1)唾液中の免疫物質と細胞免疫
 唾液の中にはIgA(免疫グロブリンA)という物質があり、風邪のような上気道感染の予防に効果があります。いわば第一関門です。大学生のボランティアを被験者に用いた研究では、笑うと唾液中のIgAが増加するという結果が出たそうです。これは上記の(a)に関係するお話です。
(2)NK細胞(Natural Killer cell:ナチュラルキラー細胞)
 前回号の予告で少し書いたお話ですが、これは上記の(b)に関係します。NK細胞はがん細胞などを殺す働きがあります。私たちの体内では、1日に何千個ものがん細胞ができていると言われていますが、それらを殺してくれているのがNK細胞です。そのお陰で、私たちはめったに「がん」にならないのです。笑うことによって、このNK細胞の働きが増加すると言われております。
(3)笑いと自己免疫疾患:関節リウマチ
 これも、(b)に関する話です。免疫の働きが正しく働かず、誤って自分の体を傷つけるようになってしまうのが自己免疫疾患です。その代表的な例が関節リウマチです。関節リウマチではIL-6(インターロイキン6)という物質が疾患の活動性と密接に関係しているといわれています。
 楽しい落語を聴いて笑った後では、関節リウマチ患者のIL-6の値が3分の1に低下し、ほぼ健常者と同じレベルになったと、日本医科大学第一病院リウマチ科吉野医師が、1996年「心身医学」で発表しています。鎮痛薬の使用量も笑いで減少したということです。
 免疫力は、病気の予防や回復にとても大きな影響を与えます。免疫力を上げるのには、十分に栄養と休養をとることが一番です。また、暖かくすることも大事です。(よく風邪を引いたときに医師からアドバイスされますが、それと同じです。)そして、ストレスを少なくして、安らかに過ごすようにしましょう。これらと同様に、笑うことも大切です。
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●蛇足:
・文章という不完全な容器に盛ることができるのは
 不完全な記憶や不完全な想いでしかないのだ。
~~村上春樹「ノルウェイの森」より
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裏話 第16話 「サメとワクチン」~~数で比べると…

裏面の健康うら話 第16話 
「サメとワクチン」~~数で比べると…(シリーズ「笑いと健康」はお休みです)
(2012年08月作成)
 むかし人食いザメが人を襲うパニック映画がありました。あの有名な「ジョーズ」です。子供の頃その映画を観た私は、その晩は思い出して恐くて寝られなかったのを覚えています。
 ところで、海へ行ってサメに喰われてしまう確率よりも、家から海岸までにたどり着く前に交通事故等で死亡する確率(数)の方が圧倒的に多い、ということをご存知でしたか?また、サメが人を殺す数よりも、人に殺されるサメの数のほうが圧倒的に多いのです。
 上記を読んでも、やはりサメの方が危険だと思ってしまう人も多いかもしれません。サメに喰われる方が、交通事故に遭うよりも、怖いし嫌ですよね?(そうでない人もいるでしょうが…)
 さて、ちょっと話題を変えてワクチンのお話です。ワクチンは原則的にその病気にかかると危険な病気について作られます。(逆にそういう病気でなければワクチンを作る必要はありません。)日本脳炎や麻疹、風疹などは、死亡する可能性、あるいは重大な障害を残す可能性があります。インフルエンザも体力が無いお年寄りがかかると死亡してしまうことがあります。
 ここで、ワクチンの副作用のため何百万人に1人の割合で重大な障害や死亡事故が生じた場合、私たち(あえて以下は「世間」と書きます)は、過剰に反応してしまうことがあります。でも、そのワクチンを実施しなかったら、より多くの人が死亡してしまうというのも事実です。
 世間の反応は分かれるでしょうが、ワクチンのトラブルで死亡した場合には、「予防のための手段で死亡するのは何事だ!あってはならない!」という反応の方が、どちらかといえば多いと思います。一方、ワクチンを受けていないためにその病気にかかってしまい死亡した場合には「病気のために亡くなったので仕方がない」あるいは「お気の毒に」となるでしょう。
 薬の副作用による死者の数とその薬の恩恵で助かった人の数でも、同様のことが言えるでしょう。でも、ワクチンや薬における恩恵と副作用の対比のお話は、サメと交通事故数との関係の話と似ています。(感覚的に感じる危険率と実際の危険率との間に差があるわけです。)
 ワクチンの実施や薬の認可等の管理は役所が行っています。時に政治も関与します。でも、世間(世論)がその判断に影響を与える場合が多いのです。何が正しいかという話でなく、どういう判断をするか(どちらを選ぶか)というお話しですね。より良い判断をしたいものです。
 今回の裏話は、医療事情裏話になってしまいましたが、このお話に結論はありません。ただ、私たち一人一人がシッカリ知って考えることが大切だ、ということは少なくとも言えそうです。
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●蛇足:
・悪は山頂の転石のように、最初は子供でも押せるが、
 それを止めることは巨人でもできない。
~~トレンチ
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裏話 第15話 「笑いと健康」その2~~ストレスの多い状態=笑いの少ない状態

裏面の健康うら話 第15話 
「笑いと健康」その2~~ストレスの多い状態=笑いの少ない状態
(2012年3月作成)
前回は日本笑い学会について簡単にご紹介いたしました。今回は、ストレスについて述べたいと思います。なお、今後は笑いが健康に及ぼす具体例を順に挙げてゆきたいと思います。
心の変化(特にストレスがかかった状態)が原因で病気がおきることがあり、それを心身症と呼んでいます。その定義は「心身症とは身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」です。(日本心身医学会 1991年)
たとえば、ストレスが原因で、胃潰瘍、頭痛(緊張型頭痛)、湿疹(かゆい発疹)、円形脱毛症、不整脈、高血圧、気管支喘息、過敏性腸症候群、月経不順などが起こると言われています。これらは、心身症の一つと言えます。(心身症でない場合も含まれますが…)
ストレスの多い状態(すなわち心身症)は、笑いの少ない状態ともいえます。つまり笑いの欠乏により、こういう病気が起きるわけです。すると笑いによって、これらの病気は予防できるのでは、と考えられます。
2007年の日本笑い学会総会で、浜松医科大学名誉教授の高田明和先生による「脳と栄養」という演題の記念講演がありました。その講演の中で次のお話が紹介されておりました。
1)米国で行われた研究ですが、インフルエンザウイルスを鼻腔に滴下した場合、社会的絆により感染に差が出たというのです。絆が太い人ほど感染しづらかったそうです。
2)病気にかかった場合、「憎しみ」「怒り」の強い人と「笑い」の絶えない人とで、回復に差が出たとのことです。
どうやら、ストレスの多い状態では、病気になりやすく、笑いが多い状態や社会的な絆の強い人では病気になりづらいようです。(「社会的な絆」とは、友人、家族、職場の同僚、趣味の仲間、近所の知人などとの間での良好な人間関係のことです。)
免疫は病気の発症に深く関与していると考えられますが、次回は「笑いと免疫」についてお話しいたします。(数年前に新聞などで報道された、「笑いでNK細胞が活性化」というお話を、簡単に予告編としてご紹介いたします。NK細胞という免疫に関与する細胞は、癌を抑制する働きがあります。私たちの体内では日々数千個もの癌細胞が発生するといわれていますが、NK細胞がこれらを殺してくれているので、普通私たちは癌になりません。このNK細胞は笑いによって活性化すると言われています。いつも笑っている人は癌になりづらいかもしれません。)
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●蛇足:
・某新聞にトヨタ86の一面広告が載っていた。
 片隅に小さな文字(2mmサイズ)で,
「発進・加速はゆるやかに。エコドライブを心がけよう。」と…。
(この車を買う人は,こんな運転しないような,
…と思ったのは私だけ?)
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略語あれこれ

世の中にはたくさん略語があります。
時に業界の違いによって全く別の意味になったりするこがあるので注意が必要です。
医療の現場でも診療科が違うと意味が違うなどということもしばしばです。
昔話ですが研修医の頃に麻酔科に配属されていた頃の話です。
術前訪問で婦人科病棟へ行きました。事前の情報収集で麻酔予定(手術予定)の患者さんのカルテを見ていると、既往歴にDMとあるではありませんか。「DM」といえば、内科および外科では「糖尿病」です。糖尿病の持病がある方に麻酔をかける場合は、それ相応の準備が必要ですが、あまり糖尿病関係の検査は行われておりませんでした。慌てて婦人科の先生に聞いてみると…
「あっ、そのDMね、糖尿病じゃなくて、破壊性奇胎(destructive mole)の略ですよ」とのこと。
研修医の私はドッと疲れたのを覚えております。
テレビの政治経済関係のニュースで「とっかい」とか聞くと、話の流れから「特別会計の略で特会」と理解できますが、中央線沿線の人の一部では、頭の片隅のごくわずかな部分の神経細胞では「中央特快の特快」と同音異義語だなって思っているハズです。(そんなアホは私だけ?)
略語で注意を要するものは、以下の2通りに分類できます。
カテゴリー1)書くと危ないけど読めば大丈夫
カテゴリー2)書いても読んでも危ないもの
…です。
各々例を挙げたいと思います。
カテゴリー1)書くと危ないけど読めば大丈夫→「西国」
 これはメールで送ると失敗して、電話で話すと大丈夫です。
 「西国の改札で2時に待ち合わせね」なんでメールで送ると、悲劇が始まります。送られた人は「にしくにに2時ね」と、南武線西国立駅の改札へ行き、メールを送った本人は中央線西国分寺駅の改札でボーッと待ちぼうけってことが起こりえます。気をつけましょう。電話で「にしこく」と伝えれば大丈夫。
カテゴリー2)書いても読んでも危ないもの→「生保」
 書いても「生保」読んでも「せいほ」です。
 生命保険の略か、生活保護の略か、さっぱり分かりません。
 注意が必要です。皆さん十分に気をつけましょう。
 えっ、最近は生活保護を意味する場合「なまぽ」って呼ぶんですか?
 しっ、知らなかったぁ…。
●蛇足:
・「二人の男の会話」
「おまえ、タバコの喫いすぎだよ、体によくないよ」
「バカなこと言うなよ、俺の親父はタバコを1日40本喫うけど、
90になってもまだぴんぴんしてるよ」
「そういえばそうかもしれないな。
俺には弟がいて全然タバコを喫わなかったんだが、
3つのとき死んでしまったよ」
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裏話 第14話 「笑いと健康」~~「日本笑い学会」についてなど

裏面の健康うら話 第14話 
「笑いと健康」~~「日本笑い学会」についてなど
(2011年12月作成)
 当院では、「笑顔と感謝は幸福と健康のもと」「笑う門には福来たる」などを基本理念としております。「笑い」が良いということを表現する言葉は、他にも「笑う顔に矢立たず」、「笑って損するは箔屋ばかりなり」など、色々と知られております。
 特に、笑うことは健康に良いと、考えられております。また、逆に「病は気から」という言葉もある通り、心と身体は密接な関係があります。心が原因で起きる身体の病気を「心身症」と呼びます。ストレスが原因で、胃潰瘍、円形脱毛、不整脈、湿疹などが引き起こされます。
 首が痛いという患者さんに、冗談で「借金はありませんか?」と尋ねたら、その方は本当に大きな借金を抱えていたため笑えなかったという失敗談あります。その話を、税理士をしている先輩に話したところ、真顔で「松山、それホントだよ、うちのお客さんでも、負債の多い人ほど、首が痛いって言うんだよ」とのことでした。つまり「借金で首が回らない」という表現は本当だというのです。「風が吹けば桶屋がもうかる」よりもよっぽど正しいというわけです。
 脱線しましたので、話を元に戻します。つまり、笑いは心身に良く、笑いの少ない状態(またはストレスの多い状態)は病気の原因だと考えられております。たくさん笑っていると病気になりづらく、病気の時にも笑うと回復が早いと、私は思っています。
 しかし、辛かったり、痛かったりすると笑うことができない、という反論もあるでしょう。実際に、そのように言われたこともあります。それに対しては、次の事例をご紹介いたします。日本医科大学リウマチ科の吉野教授による、「笑いによってリウマチ患者さんの痛みが軽減され、鎮痛薬の使用量が減った」という研究があるのです。
 また、ある心理学の研究では「楽しいから笑うということ以外に、笑うとさらに楽しくなる」という結果が出ています。丁度「怒ると余計腹が立つ」の正反対です。他に、大声で笑わなくても、鏡の前で笑顔を作って、自分の笑顔をみるとリフレッシュ効果があるという報告もあります。
 つまり、心がけ次第で、私たちはストレスを軽減できたり、リフレッシュできたり、病気を減らしたりできると思います。このように笑いについての様々な研究がなされております。私が所属している「日本笑い学会」でも、笑いに関するあらゆる事柄が、研究の対象になっています。
 今後、日本笑い学会で発表された研究の内容などを、順次この「裏話」でご紹介してまいります。(なお、途中で別の話題を割り込みで取り上げることもありますので、連載ではありません。)
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 正義感・頑固・新聞の宣伝から成り立っている。
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裏話 第13話 「続・血圧の上下について」~~体温調節とは少し違います     

裏面の健康うら話 第13話 
「続・血圧の上下について」(前回は「第2話」)~~体温調節とは少し違います
(2011年10月作成)
 「体温調節とは少し違います」と副題にありますが、まずそのことから解説いたします。私たちの身体には恒常性というのがあります。恒常性(ホメオスタシス)とは生物のもつ重要な性質のひとつで生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質やその状態を指します。
 体温は厳格に調節されています。感染症(風邪など)で、細菌をやっつけるためにわざと身体が体温を上げる場合もありますが、通常は一定に保たれるように様々な機構が働いています。
 血圧を一定に保つような調節機構もありますが、種々の事情で血圧は上下することがあります。たとえば、ストレスがかかったり興奮したときには上昇します。動物が獲物を捕るとき等には、アドレナリンが出て血圧が上昇し、早く走るために筋肉へ血液(つまり酸素)を多く届けます。
 つまり必要があってわざと急に血圧を上昇させることがあるのです。そういう状態を不快な信号として感じていては、ある意味、邪魔でしかたがありません。したがって私たちの身体には血圧の上下を感じるセンサーはありません。(もちろん、先ほど述べたとおり、血圧を一定に保つための調節機構はありますが、血圧の上下はほとんど感じません。)
 一方、とても重要な感覚があります。それは「痛み」です。痛みなどの感覚は身体にとって危険信号です。怪我してしまって痛みを感じたり、熱いものにさわって火傷を負いそうなときには、瞬時に手や足を引っ込めなければなりません。痛みの信号は身体を守るために極めて重要で必要な感覚なのです。ですから痛覚を伝える神経では、速く信号が伝わるようになっています。(※)。
 血圧の話しに戻ります。異常な高血圧では頭痛やめまいが起きることがあります。しかし、もっと多いのがその逆のパターンです。つまり、頭痛やめまいがあるために、それが原因で血圧が上昇していて、治療によって頭痛やめまいが治ると、自然に血圧は下がる場合がほとんどです。
 繰り返しますが、私たちの身体は血圧の上昇をほとんど感じません。だから怖いのです。血圧を測定して治療が必要な高血圧ならば、対処しておくべきだと思います。高血圧の持続は、心筋梗塞や脳卒中(脳出血、脳梗塞)の原因となりうるからです。
 ご興味のある方は、「血圧の上下について~~気温や株価と同じ(第2話)」もご一読下さい。
(※)糖尿病などが進行して、末梢神経障害が起きると、痛みや熱さの感覚が鈍くなります。そういう患者さんでは火傷の心配などが出てきます。詳細はいずれ「糖尿病」の説明で書きます。
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