裏話 第12話 「緑は心や身体に良い?」~~目にはいいとか?

裏面の健康うら話 第12話 
「緑は心や身体に良い?」~~目にはいいとか?
(2011年8月作成)
 よく森林浴は良いとか、緑を見ると目によい、などといいます。森林浴は緑の中に入るということ以外に、森の木々から何か影響を及ぼす物質(イオン等という説…)が出ているのかもしれません。または放出される酸素が多いからかもしれません。その「緑」について考えます。
 まず、植物の「緑」とは葉のことで、言うまでもなく葉緑素(クロロフィル)の色素が緑だからなのです。葉では吸った二酸化炭素と、根から吸い上げた水とを原料として、日光をエネルギーとして葉緑素は光合成を行います。その産物として栄養素を作り(でんぷん)、副産物の酸素は葉から大気へ出されます。
 実は葉緑素で使っている光は、日光の中の赤や青の成分の光なんです。残りの緑の光は葉にとっては不要なので反射したり素通りしたりします。だから、私たちの目には葉は緑に見えるのです。つまり、植物にとっては、緑の光は「使えない光」なのです。(一説には、進化の過程で、植物たちは緑の光を上手に使えなかったとも言われています。)
 でも、私たちにとっては緑の光はありがたいのです。心を癒す効果、目によいという効果があるようです。心の癒しの効果については別の機会に譲るとして、今回は目についてお話します。
 眼科やメガネ屋さんでの検眼の際に、「赤と緑で、どちらがハッキリ見えますか?」と質問されることがあります。これは色による光の屈折率の違いを用いた検査なのです。屈折率というと難しいですが、プリズムの原理のことです(色による屈折の違いにより虹が起きるわけです)。
 目のレンズ(水晶体)で光は屈折して、奥の網膜に像を結びます。カメラにたとえると、網膜はカメラの奥にあるフィルムに相当します。(最近はデジカメなので、フィルムの変わりにセンサーになっています。)
 遠くのものを見るときは水晶体を薄くしてピントを合わせ、近くのものを見るときには水晶体を厚くします。老眼になるとその調節がうまくいかないので、近くのものが見づらくなります。近視の人には凹レンズを用いたメガネで視力を調節し、逆に遠視の人には凸レンズを用います。
 緑の光は波長が短いために屈折率が高いので、赤などの光と比べて網膜の手前でピントが合ってしまいます。すると、緑のものをシッカリ見るためには、目の中では水晶体を薄くする必要があります。つまり、遠くのものを見ようと努力するのと同じ効果があります。遠くの緑を見ると目によいという理由はここにあります。
 でも、こんなややこしい理屈はぬきにして、緑に囲まれた生活っていいですよね。

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裏話 第11話 「薬の自己調節」~~自己判断してよいかどうかについて

裏面の健康うら話 第11話 
「薬の自己調節」~~自己判断してよいかどうかについて
(2011年6月作成)
 薬を自己判断で飲むのをやめたり、「前と同じ症状だから」と以前処方された古い薬を臨時で飲んでみたりしても良いものでしょうか?実は自己判断で使ってよい薬はかなり少ないのです。むしろそういう薬は例外的です。今回はお薬の使い方についてご説明いたします。
(1)自己判断しないほうがよい薬(場合)
(1-1)飲む時間(服用法)を変えた:例)血圧の薬で…
 「朝起きて測った血圧が高かったので、朝食後用の血圧の薬をすぐに朝食前に飲んだ」という話を聞くことがあります。これは間違いです。そもそも食後用の薬は食後に飲むことによって、長い時間効果が安定するようになっています。また多くの薬は服用後すぐに効きません。逆に食前に飲んでしまうと、次の内服時間までの効き目が無くなり、かえって血圧を上げてしまいます。血圧が高いことが続いたら自己判断せず、予定日より早めに受診して医師に相談してください。
(1-2)以前処方されて残っていた薬を飲んだ:例)抗生物質で…
 「風邪をひいたので前もらって残っていた抗生物質を飲みました」というケースもあります。これもお勧めできません。多くの風邪はウイルスによる病気ですから抗生物質は無効です。また仮に抗生物質が有効である場合も、菌の種類によって効き目は異なります。ですので、診察を受けて、病気に合わせて処方をされた抗生物質を服用するというのが正解です。
 また、処方された抗生物質は最後まで内服しましょう。自己判断で途中で中止すると、生き残ってしまった細菌が薬のことを覚えてしまい(薬剤耐性菌)、院内感染などの社会問題の原因になります。(詳細はいずれ書くつもりですが、この件でご質問のある方は院長までどうぞ。)
(1-3)他にもたくさん:ここでは省略します。つまりほとんどの薬で自己判断は禁物です。
(2)自己判断して調節してもよい薬(場合)
 たとえば、「痛み止め」「解熱薬」などです。「痛い時に1日何回まで使ってください」と診察時に事前の説明があると思います。また処方箋に書いてあるので、薬剤師から説明を受けると思います。そのような説明があった場合だけ、自己判断で使っても大丈夫です。
 頭痛薬以外に、解熱剤、吐き気止めなども、そのような使い方をする場合があります。実際には、自己判断で使ってよい薬は品目数の上でもごくわずかですし、病院で処方される割合も少ないのです。是非ともご注意していただきたいと思います。
 薬は患者さんと医師の両方で合意した上で使うものです。よく分からずに、ただ処方されたからといって飲んではいけません。十分に理解して納得したうえで内服してください。自分の勝手な判断で中止したり、飲み方を変えたり、家に残っていた古い薬を内服するのもいけません。
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裏話 第10話 「これらは防御反応」~~咳や嘔吐は辛くて苦しいですが…

裏面の健康うら話 第10話 
「これらは防御反応」~~咳や嘔吐は辛くて苦しいですが…
(2011年4月作成)
嘔吐、咳、下痢など…いずれもつらい症状ですよね。でも、これらはどれも私たちの体を守る自然な働きである場合が多いのです。つまり防御反応です。
嘔吐とは、胃の内容物が食道を通して、口から吐き出される現象です。胃の中に悪い物(毒や腐ったもの)が入ったとします。そのままだと腸のほうへ流れていってしまいます。それを阻止するために、吐き出すわけです。通常は吐き気を伴い、そのためとても辛いわけです。
咳は気道の中にある分泌物や異物または病原体(細菌やウイルス)を外に出すための生態の防御反応です。特に痰をたくさんともなう咳のときは、咳を無理に止めることによって痰はもっと溜まってしまい、呼吸が苦しくなってしまいます。
下痢も同様です。体にとって危険なものを、いち早く体の外に出すための作用です。
発熱も同じように、細菌やウイルスを死滅させたり、機能を奪うという目的があります。ウイルスや細菌は36度で活発に増殖するからです。体はそのために38度~40度に体温を上昇させて、病原体を駆除します。発熱により免疫力が高まるわけです。
このように、嘔吐、咳、下痢、発熱などは生体の防御反応ですが、その反応が過度の場合は非常に辛く、体力も消耗してしまうので、必要に応じて薬で抑えることが必要な場合もあります。
たとえば、ひどい下痢が続いた場合、下痢で水分を失ってしまい、脱水になってはいけません。または、咳がひどすぎて著しく体力が消耗したり睡眠不足になる等して、免疫力が落ちると病気がさらに悪化してしまいます。このような場合には薬を使って下痢や咳を抑えることが必要です。
また、胃の中に刺激物や毒物はなく、別の部位の病気による症状として嘔吐をすることがあります。たとえば脳の病気などでは、その影響で嘔吐をすることがあります。その場合は、脳の病気の治療と平行して、苦痛を和らげる等のために嘔吐を抑える治療をする場合もあります。
以上のように、嘔吐、咳、下痢、発熱などは体を守る反応だと知った上で、必要に応じて、なるべく最小限の対応をし、原因の病気をつきとめてその治療をする、ということが大切です。やみくもに、防御反応だけを止めてはいけないというわけです。
※病気の原因をつきとめてその治療をすることを「根治療法」と呼び、症状だけを和らげる治療を「対症療法」と呼びます。
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裏話 第9話 「続・3時間待って3分診療」~~「じゃあどうするの?」 

裏面の健康うら話 第9話 
「続・3時間待って3分診療」~~「じゃあどうするの?」
(2011年2月作成:2013年4月25日加筆しました。)
前回の「3時間待って3分診療」を読んで、「じゃあ、いったいどういう対策があるの?」と思われた方も多いでしょう。前回、取り組みの一つとして予約診療について書きましたが、一口に予約制といっても色々あり、問題もあります。今回は、その「予約制」について説明いたします。
まず、予約制には2種類あります。「完全予約制」と「予約優先制」です。「完全予約制」とは予約した患者さんだけお受けするというものです。「予約優先制」とは、予約された方も、予約していない方もお受けするというものです。つまり「予約なし」と「完全予約制」の中間に位置します。いわば折衷案的なものです。それでは、各々の方式について述べたいと思います。
(1)予約なし=先着順番制:前回書きましたので省略いたします。
いつ受診してもよいという気楽さは利点ですが、混んでいると待ち時間が非常に長くなります。
(2)完全予約制:導入している医療機関はそれほど多くありません。
この方式では、待ち時間は確実に短くなるのが利点です。一方、患者さんは必ず予約をしなければならず、面倒に感じる方もいるでしょう。また、予約が一杯になると希望の曜日や時間帯に受診できなくなるというのも欠点です。医療機関としても、時間的に余裕を持たせるために、お受けできる患者さんの数を制限する必要があり、経営上難しいというのが実情です。
(3)予約優先制:当院では、この方式です。
この方式の利点は、予約したい方は予約で受診でき、待ち時間をやや短縮することができます。一方で予約なしでも受診可能ですので、自由度は高いと言えます。しかし、予約外で受診する場合、(1)の予約なしの方式と比べると、待ち時間がさらに長くなる傾向にあります。
その他の取り組みをしている医療機関もあります。たとえば朝一番の時間枠は予約は無しで、先着順番制として、診療受付開始30分後から予約をとるようにしている診療所もあります。また、インターネット予約を採用している医療機関もあります。あるいは曜日や時間帯を区切って、完全予約制と先着順番制を併用している医療機関もあります。
以上、予約制についてご説明しましたが、一長一短で完璧な方式はありません。当院では、それらをふまえて予約優先制を導入していますので、ご理解とご協力をお願いいたします(土曜日の午後は、平成25年2月より完全予約制と変更いたしました)。
(当院では30分単位で複数の予約をお受けしております。ですので、最大30分程度(平均で約15分)お待ちいただく計算になります。また、重病の方の診察や外傷の処置を行うと待ち時間がさらに長くなることもあります。その点につきましてもご理解とご協力をお願いいたします。)
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裏話 第8話「3時間待って3分診療」~~「健康うら話」ではなく「医療事情うら話」です。

裏面の健康うら話 第8話 
「3時間待って3分診療」~~「健康うら話」ではなく「医療事情うら話」です。
(2010年12月作成)
病院の待ち時間は長いのに診察時間が短いことを「3時間待って3分診療」と表現する場合があります。私たち医療従事者としては耳が痛いお話しです。この待ち時間と診療時間について少し考えてみたいと思います。例として、総合病院の内科における午前外来を挙げます。大きな病院の内科を受診した人は多いと思いますし、一般的に混雑して待ち時間が長いからです。
(1)決まっている時間
多くの総合病院の内科には複数の診察室があり、そのうちのいくつかは午前以外に午後の専門外来(たとえば1時からとか)に使われることがあります。すると、その診察室は時間内に終了して、部屋を空けなければいけません。
また、医師も午前の外来が終わったら、午後は入院患者さんの診察をしたり、検査の予定(胃カメラなど)があったりします。ここでは、朝9時から診察開始として、その診察室の使える時間が最長でも午後1時までの4時間と仮定します。
(2)受診する患者さんの数と診察時間:「…3分診療」
仮に患者さんが30人来院したとします。診察室への出入りの時間も含めて平均10分かかったとすると、1時間では6人しか診られません。30人全部で5時間かかることになり、終了は午後2時になってしまいます。もし、平均8分だったら午後1時に終了することができます。
しかし、初診の方や重症の患者さんでは、より時間のかかる場合もあります。すると、病状が落ち着いている再診の患者さんでは3分だけの診察になってしまうこともあるわけです。
(3)待ち時間について:「3時間待って…」
次に、待ち時間の「3時間」の部分についてです。(2)で午前中に30人の患者さんが来院したと仮定しました。患者さんが8分間隔で来院した場合(つまり1人目が9時丁度に来院。2人目以降がそれぞれ9時8分、9時16分に…)、理論的には待ち時間はほぼゼロになります。
でも、もし万一、先を争うように30人全員が9時に来院したとしたらどうなるでしょうか? 1番目の方は待ち時間ゼロで診察が始まります。しかし、30人目の方は3~4時間待たなければなりません。すると、「3時間待って3分診療」という現象が起こりうるのです。
さて、その解決策はあるのでしょうか?上記は予約制を全く行っていない場合ですが、予約制を導入する医療機関が増えてきました。この続き(対策や当院での取り組み)は次回以降に書きたいと思います。(ご興味があるものの、次回来院予定のない方(本日が最後の方)には、当院HP内の「ブログかも?」の中でお読み頂けるように致しますので、そちらでご覧ください。)
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裏話 第7話「薬ができるまで」~~バイアグラ開発秘話

裏面の健康うら話 第7話 
「薬ができるまで」~~バイアグラ開発秘話(2010年10月作成)
 副題の「バイアグラ」に目が留った御仁もおられるかも知れませんが、まずは薬の開発から…。
 (1)研究開発
 製薬会社では基礎研究を重ね、化学合成をしたり抽出したりして新しい薬を開発します。まずは試験管内で有用性を確認し、さらに動物実験で効果や副作用などが確認されると、新薬の候補になります。次はいよいよ実験室を離れて、医療機関における臨床試験へと進みます。
 (2)臨床試験
 最初は健康な人で安全性を確認します。次に患者さんにおいて有効性と安全性を確認します。通常は8年程度の期間をかけ、延べ1万人という多くの患者さんで効果や副作用を確認した後、ようやく厚生労働省によって新薬として製造ならびに販売の承認がなされます。
 ここで、「プラセボ」という言葉を聞いたことがある人もいるかと思います。「プラセボ効果」とは「偽薬効果」という意味で,薬を内服したことにより,それだけ心理的に効果があると思わせる現象(効果)です。なので,不定愁訴の方には砂糖などを「お薬ですよ」と伝えて内服してもらうと、それだけで症状が消えることがあります。(この場合、砂糖が偽薬に相当します。)
 一定の確率でその様な効果があることは知られていますので,その薬に本当の治療効果があるかどうかは,他の薬(既存の治療薬またはプラセボ)と比較して統計的に有意差があるかどうかで判定します。それに合格してはじめて、厚生労働省から製造および販売の許可がおりるのです。
(3)バイアグラ開発秘話 (なお、専門外ですので、当院でバイアグラは扱っておりません。)
 むかし,英国ファイザー研究所でクエン酸シルデナフィルという薬品が合成されました。当初,抗狭心症薬として開発が進められましたが,残念なことに臨床試験でその有用性が認められませんでした。(多くの患者さんのデータを集計した結果,統計的には狭心症に対する治療効果があるとは言えませんでした。)従って,その狭心症治療薬は発売には至りませんでした。
 臨床試験の終了後、残った薬を回収しようとしたところ,思わぬ副作用に喜んだためか,返却したがらない人が何人もいたそうです。しかも男性ばかり。その副作用とは,陰茎勃起の発現でした。多くの被検者(試験に協力した患者さん)からその副作用報告があったのです。
 というわけで,ファイザー製薬は,その薬の商品名を「バイアグラ」として,販売を開始しました。名前の由来はvital(生きいきした)とNiagara(ナイアガラ)の合成だそうです。狭心症治療薬開発失敗であきらめず、勃起不全治療薬として路線変更したのが成功の秘訣でした。
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時間の長短

時の経つのは早いものです。
それが楽しいひと時ならなおのことです。
光陰矢のごとし、などという言葉もあります。
ところが、待つ時間は長く感じられます。
特に不安があったり、苦痛があるのならさらに長く感じられます。
病院や診療所の待合室で診察の順番を待つ場合も長いですよね。
(私も患者の立場で医療機関を受診するといつも思います。)
そこで、当院では待ち時間が長くならないように工夫をしておりますし、努力もしております。
また、待ち時間が気なる方のために予約優先制の診療を導入しております。
でも、混雑時や、重い病状の患者さんを優先的に診療しなければならない場合など、皆様をお待たせしてしまうことが多々あります。
お詫びを申し上げるとともに、退屈しのぎの一助になることを願って、院内に電子掲示板と称してコンピュータで色々な小話や画像や医学的な情報などを提供しております。
また、配布しているご案内の裏面に、「裏面の健康うら話」と題して、色々なお話を取り上げて、回を重ねてまいりました。それらのバックナンバーを一冊のファイルにまとめて待合室においてあります。(この「裏話、蛇足、等々」でも、2月遅れですが、それらを順次ご紹介しております。)
しかし、やはり待つ時間は長いですよね。
なるべくお待たせする時間が長くならないよう、今後も努力を重ねてまいります。
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裏話 第6話「脳神経外科と神経内科の違い」~~精神神経科との違いも…

裏面の健康うら話 第6話 
「脳神経外科と神経内科の違い」~~精神神経科との違いも…(2010年8月作成)
 よく「脳外科と神経内科の違いって何ですか?」という質問を受けることがあります。また、神経内科受診を勧めると、「精神科ですか?」とか「神経科ですか?」と尋ね返されることがあります。今回はこの辺のことについて述べたいと思います。
(1)名称について(略称についても)
 最初に略称と正式名称の関係などについて書きます。トップバッターは脳外科です。脳外科の正式名称は脳神経外科で、当院の院長は脳神経外科の専門医です。次は神経内科です。神経内科は病院によっては脳神経内科と呼ばれることもあります。
 もう一つは、精神科です。精神科の正式名称は精神神経科で、時に神経科という言い方をする病院もあります。うつ病などの心の病気を扱う科です。「メンタルクリニック」の先生のほとんどは精神神経科の医師です。ときに「心療内科」と標榜していることもあります。
(2)他の科でたとえると(消化器や呼吸器などでは)
 本題の脳外科と神経内科の違いについて説明する前に、他の科の例を出したほうが分かりやすいので、そちらからお話しいたします。
 たとえば胃腸の病気です。胃潰瘍とか肝炎などの病気は消化器内科で診療いたします。でも、胃癌とか大腸癌などの手術が必要な病気が見つかったら外科(消化器外科)へ紹介されます。つまり手術しないものを消化器内科で、手術するものを消化器外科で診ているわけです。
 次に肺の病気を例に挙げます。肺炎、気管支炎、喘息などは呼吸器内科で診ます。でも、手術しなければならない病気(肺癌など)が見つかったら呼吸器外科で治療することになります。
 (3)つまり、脳神経外科と神経内科の違いは…
 脳外科と神経内科の関係もこれに似ています。神経内科では手術しない神経系や脳の病気を扱います。脳梗塞、髄膜炎、筋ジストロフィー、アルツハイマー病やパーキンソン病などです。
 脳神経外科では、手術が必要な脳の病気(脳腫瘍、くも膜下出血、水頭症)や頭部外傷の患者さんを診ます。神経内科でこれらの病気が見つかって脳神経外科に紹介されることもあります。
 神経内科の病気は聞き慣れないものが多いので、はじめに消化器や呼吸器を例に出しました。なお、脳梗塞や脳出血などの病気は神経内科と脳神経外科の両方で診る場合もあります。
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裏話 第5話「耳鳴について」~~一部は神経痛と似ている?

裏面の健康うら話 第5話 
「耳鳴について」~~一部は神経痛と似ている?(2010年6月作成)
当院を「耳鳴」で受診される患者さんにお尋ねすると、脳に異常があるのでは?と心配で来院される場合が多いようです。耳鳴については、最初に「耳鳴は難しいのです。そして、主に耳鼻科が専門です」とお話することがあります。今回は、この”難しい”耳鳴についてです。
(1)音を聞く仕組み:
まず、私たちの耳に入った音は鼓膜を振動させ、その奥の中耳を経て内耳で神経の信号に変換されます。その信号が神経を伝って脳に届き、音として感じます。この神経を聴神経と呼びます。
(2)脳は聞こえない:
頭の中で音がするので脳に問題があると考える人がいますが、脳には音を感じるセンサー(いわゆる耳、マイク)はありません。ですので、耳鳴は原則的に「耳」または「神経」で感じています。ステレオヘッドフォンで音楽を聴くと頭の中で聞こえる感じがするのは、その理屈です。
 (3)耳鳴には大きく2種類ある:耳で聞いているものと神経で感じているもの
 (3-1)耳で感じている耳鳴(つまり鼓膜が振動している)
脳の中の血管が細くなる等して、血の流れる音がザーッザーッと雑音として聞こえる場合などです。脳血管などの精密検査や治療が必要になる場合があります。他にはゴミや水が入り、雑音が耳鳴の原因となったり、中耳の異常で生じるものもあります。これらは耳鼻咽喉科が専門です。
 (3-2)神経で感じている耳鳴(つまり鼓膜は振動していない)
炎症やケガなど痛みの原因となる状態ではないのに、知覚神経が勝手に興奮して、痛みの信号を脳へ送ってしまうために、痛みを感じてしまうのが神経痛です。
それと同様に、鼓膜は振動していないのに(実際の音はないのに)、耳から音の信号を伝える聴神経が勝手に興奮して、音を感じているかのように脳へ信号を送ってしまうために耳鳴として聞こえてしまうのです。タイトルの横に神経痛と似ていると書いたのは、このタイプです。難聴に伴う耳鳴もあり、この場合も必要に応じて耳鼻咽喉科を紹介いたします。
意外と多いのが生理的耳鳴といわれているものです。これも神経で感じているタイプです。誰にでもあるのですが、気にならないだけです。セミの鳴き声のように、または、キーンと聞こえたりもします。昼間騒がしいときや何かに集中しているときには聞こえません。でも夜になり静かになると聞こえてきます。私(院長)も子供の頃から聞こえておりました。成人して初めて気づくと気になって仕方がないという場合がほとんどです。これが難しい耳鳴の正体の一つです。
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裏話 第4話 「生活習慣病について」~~ここまでは無症状。でも…

裏面の健康うら話 第4話
「生活習慣病について」~~ここまでは無症状。でも… (2010年4月作成)
 以前は、年のせいなので仕方ないでしょう、という意味の「成人病」と言われていました。でも、「普段の生活習慣が原因で起きる病気なんですよ」ということで「生活習慣病」と名前が変わりました。最近は関連した「メタボリック症候群」なんていう言葉も聞かれるようになりました。
 第1段階) 原因となる生活習慣 (楽しいけど、または楽チンだけど、実は健康に悪い生活)
美味しいお料理はたくさん食べたくなるものです。好きなお酒をたくさん飲みたいという方もいるでしょう。あるいは、ついタバコを吸ってしまうという方もいると思います。また、体を動かすと疲れるので、運動不足気味という方もいると思います。
 このような楽しい、あるいは楽チンな生活は、実は健康に悪い影響を与えることが多いのです。
 第2段階) 生活習慣病 (ここまでは、ほとんどが無症状。調べたり測らないと分かりません。)
先ほど述べた健康に良くない生活習慣を続けていると、肥満になったり、(悪玉)コレステロールが上がったりします。または、血糖値が上がったり、あるいは動脈硬化が進んだりします。そうすると、高血圧、高脂血症(脂質異常症)、糖尿病、肥満などが起きてきます。
 実はこれらは何かを測らないと分かりません。肥満も見た目には太るので分かりますが、体重計に乗らないと正確には分かりません。血圧は測らないと気づきません。つまり、高血圧はほとんど無症状なのです。糖尿病も脂質異常症も血液検査をしないと分かりません。
 第3段階) 脳卒中や心筋梗塞、癌 (あるとき突然発病したり、気づいたら手遅れ…。)
さて、上記の生活習慣病を長年放置すると、その結果、突然血管が破れたり詰まったりします。あるいは、生活習慣病は多くの癌の危険因子に名を連ねています。
 たとえば、心筋梗塞で突然の胸痛を起したりします(ごく一部の人はそのまま帰らぬ人に…)。または、脳卒中(脳梗塞や脳出血)を起して、急に呂律が回らなくなったり、手足が麻痺して障害が残ったり、もしくは死亡したり等ということがあります。こうなってからでは手遅れです。
 まとめ)上記の第2段階までは無症状ということがポイントです。気づいたら、すでに第3段階で、「時すでに遅し」となるわけです。第2段階までの間に手を打っておきたいものですね。
 おまけ)頭痛やめまいも生活習慣が原因?
頭痛やめまいの多くは、姿勢の悪さや運動不足(じっと同じ姿勢を続けるなど)が原因です。その場合は、薬を飲むだけでは治らず、そういう点を改める必要があります。頭痛やめまいの多くも、広い意味での生活習慣病かもしれませんね。
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